私たちが、この要求に二つ返事で応じたのは、クリの木を扱う大変さを、実際に目のあたりにして知っていたことと、オヤジさんたちが、手抜きの無い、誠心誠意の仕事をしてくれていたことを、毎日見て知っていたからだ。オヤジさんが出してきた工事内訳書を見て、私は、胸を打たれた。この内訳書の中で、オヤジさんの働きは、3人工になっていた。たぶん、この数カ月、遅々として進まないクリの刻みにやきもきしながらも、オヤジさんは、先頭になって働いてきたことだろう。
[参考情報]
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そのオヤジさんが、自分の労力をわずか三日分にしているのは、自分の分はいいから、みんなに金を払ってほしいということだ。それは、昔かたぎの職人の心根だった。誤算をしたのは、オヤジさんだけではない。Tさんも、私たちも、クリという木をナメていた。見誤っていた。スギやヒノキのように扱えると錯覚し、それだけの予算と日程しか組まなかった。この時はじめて、私たちは、眞木建設の社長が出してきた見積もりの、本当の意味を知った。最初に、その見積もりを見たときには、正直言って高いと思った。だが、高いのではなく、これはクリという木が持っている性質を知っていればこそ出さざるをえなかったギリギリの価格だったのだ。最初に社長に会った時に、「クリはナメてはかかれない木だよ」と言われた言葉の意味が、少しだが、現実としてわかった気がした。
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